日本の豚は何を食べているのか。当サイトの日本ブランド豚事典に収録する419銘柄(2026年10月時点)のうち、飼料の記載がある401銘柄を調べると、焼酎粕・酒粕・茶葉・梅・柑橘・海藻・木酢液や炭・よもぎなどの薬草・納豆・きなこのどれかを挙げる銘柄が、重複を除いて68ありました。さつまいもを加えると93銘柄です。
一方で、餌の土台はとうもろこしや麦などの穀物と大豆粕などを組み合わせる配合飼料です。配合や副産物の割合は銘柄ごとに異なり、配合飼料を使わない銘柄もありますが、焼酎粕や茶葉はこの土台に足される副菜にあたります。日本らしさは、土地で余るものや名産品を豚に食べさせて銘柄の名前と物語にしてきたことです。

世界の豚は何を食べているのか?
一次資料で確かめられる範囲だけを並べます。米国では、カンザス州立大学の肥育試験の配合例で、とうもろこしが6割台から9割弱、大豆粕が1〜3割(試験用の配合で全米平均ではありません)。イリノイ大学の総説も、米国の大半の地域で豚の穀物はとうもろこしが主体だとしています。欧州はひとくくりにできず、デンマークではオーフス大学などの研究が代表的な配合として小麦55%・大麦26%・大豆粕16%を置く一方、イタリアのパルマハムの生産規程は、飼料の乾物中でとうもろこしを最大65%まで認めています。日本は、農林水産省の資料では配合飼料の原料の約5割がとうもろこしで、令和7年度の輸入とうもろこしは99%が米国産です。
| 国・地域 | 主な穀物・たんぱく源 | 根拠の性格 |
|---|---|---|
| 米国 | とうもろこし+大豆粕 | 大学の肥育試験の配合例 |
| デンマーク | 小麦・大麦+大豆粕 | 大学の研究が置いた代表的な配合 |
| イタリア(パルマハム) | とうもろこし最大65%(乾物中)・大麦や小麦も可 | 生産規程の上限値 |
| スペイン(イベリコ・セボ/セボ・デ・カンポ) | 穀物と豆類が主体の配合飼料 | 品質規格(比率の定めなし) |
| 日本 | とうもろこし約5割(配合飼料の原料全体) | 農林水産省の統計 |
日本ならではの餌:焼酎粕から、きなこまで
銘柄数は記事の「飼料の特徴」欄にその餌が出てくる数(2026年10月時点)です。
焼酎粕(7銘柄)

焼酎の産地の副産物を使う餌です。酒の粕を豚に与える発想は世界にあり、米国ではエタノールの蒸留粕(DDGS)が標準的な原料ですが、海外で焼酎粕を豚に与える例は、今回調べた英語圏の資料では確認できませんでした。宮崎県のいもこ豚は飼料用米「えびの米」と芋焼酎「明月」の焼酎粕をブレンドした専用飼料。大分県の錦雲豚は学校給食の未使用米飯と焼酎かすを液状で与え、焼酎かすで臭みを抑えてうまみを引き出すのが狙いと記しています。
酒粕・泡盛粕(5銘柄)
日本酒や泡盛の粕を使う銘柄です。兵庫県のゴールデン・ボア・ポーク(淡路いのぶた)は淡路島産の飼料米とビール粕、酒かすを配合した特別飼料。沖縄県では山原豚(ヤンバルトン)が麦主体の指定配合飼料に泡盛の酒かすや海藻、よもぎをブレンドし、やんばる島豚あぐーとやんばる島豚あぐ〜も泡盛粕を加えています。三重県の伊勢あかりのぽーくは、ビール工場のモルト粕や菓子屑、酒造会社の酒粕を合わせたエコフィードで育ちます。
茶葉・緑茶・杜仲茶(7銘柄)

緑茶の副産物を豚に与える研究は韓国やベトナムにもありますが、緑茶を看板にした銘柄豚は英語圏の資料では見つかりませんでした。静岡県のTEA豚(てぃーとん)は岩清水と緑茶葉でつくる「水出し緑茶」を飲ませる銘柄。鹿児島県の茶美豚は出荷前約2か月間、緑茶粉末とさつまいも(またはキャッサバ芋)を配合した専用飼料。岩手県の岩手山麓健康豚コマクサ杜仲茶ポークは自社栽培の杜仲茶葉を微粉末にして肥育後期に加えます。
梅・柚子・へべす・みかん(梅3銘柄・柑橘5銘柄)

梅を豚に与える例は、英語圏の公的資料や論文では見つかりませんでした。和歌山県の紀州うめぶたは食品残渣に県産の梅酢エキスを組み合わせた飼料。大阪府のなにわポークの「梅プレミアム」は梅酒の漬け梅を砕いて与え、熊本県の天草梅肉ポークは梅肉エキスを与えます。柑橘も日本の豚らしい餌です。宮崎県の日向へべす豚は特産の香酸柑橘「へべす」の搾りかすを乾燥・粉砕して加え、ゆずポークは出荷前2か月間、鹿児島県曽於市産の柚子を配合。高知県のゆず豚は乾燥した柚子の果皮を米粉やおからなどと合わせています。
海藻・昆布(25銘柄)

海藻は、さつまいもを除く今回の10分類ではいちばん多い餌でした。海外ではアイルランドに研究例(2026年・Teagasc)がありますが、海藻を看板にした銘柄の商業例は見つかりませんでした。北海道の日高のホエー豚はホエーと、日高昆布の粉末を加えた植物性飼料を与える銘柄。岩手県の南部福来豚は海藻粉末とゴマを配合しています。
木酢液・竹酢液・炭(19銘柄)
木酢液や炭を混ぜる工夫は19銘柄が挙げ、生産者の説明は「腸内環境を整える」「臭みを抑える」に集中しています。群馬県のクイーンポークは指定配合飼料に木酢酸を添加。鹿児島県の鹿児島OXは竹酢液を加え、抗生物質に頼らない飼育を目指すと記しています。
よもぎ・薬草、そして「地養豚」(12銘柄)
よもぎや和漢の生薬を混ぜる銘柄もあります。茨城県の霜ふりハーブはヨモギ粉末、ショウキョウ、ドクダミ、朝鮮人参などを加えたハーブ混合飼料。よもぎ・海藻・木酢液の三つが一度に出てくるのが「地養豚」です。農研テクノ株式会社の混合飼料「地養素」は、木酢の精製液とゼオライト、海藻、ヨモギなどが原料で、同社の沿革では1983年に地養素、1987年に銘柄豚肉「地養豚」を発表。かみふらの地養豚(北海道)、青森地養豚、いばらき地養豚と、同じ仕組みの銘柄が並びます。
納豆(2銘柄・納豆菌のみは別に1銘柄)
納豆菌と同じ種の枯草菌は、2012年にEUが特定の菌株を飼料添加物として認可した例があります。一方、「納豆」そのものを食べさせる例は英語圏の資料では見つかりませんでした。岐阜県の納豆喰豚(ナットクトン)は肥育豚の飼料に納豆粉末を添加する、名前からして納豆の銘柄。和歌山県の紀州うめぶたも納豆を含む食品残渣を使います。納豆菌だけを添加する埼玉県の六金ポーク(ロッキンポーク)は、納豆とは分けて数えました。
きなこ(4銘柄)
焙煎した大豆は海外でも飼料になりますが、「きなこ」として与える例は見つかりませんでした。宮崎県のはざまのきなこ豚は大豆きなこを配合した指定配合飼料で、生産者はまろやかな肉質を目指すと説明。山梨県のワイントンはきなこ入りの自家配合に加え、勝沼のワイナリーの専用白ワインを朝夕飲ませます。
さつまいも、そして黒豚(31銘柄)

さつまいもは31銘柄が挙げる定番です。鹿児島県黒豚生産者協議会の基準では、「かごしま黒豚」は肥育後期にさつまいもを10〜20%混ぜた飼料を60日以上与えることになっています(農林水産省の広報誌affによる)。かごしま黒豚や黒の匠など鹿児島の黒豚群はこの型で仕上げられています(黒豚の定義は黒豚とは?のガイドで)。宮崎県の日向おさつポークは甘藷ミールを肥育仕上げ期に60日以上、徳島県の阿波の金時豚は「鳴門金時」を配合しています。
海外にもあるけれど、日本流の餌
どんぐり:イベリコの法律と、阿蘇・宮崎のどんぐり粉

どんぐりで豚を育てる代表はスペインのイベリコ豚で、どんぐりが条件になるのは「デ・ベジョータ」の区分です。スペインの王令4/2014は、10月1日から12月15日の間にどんぐりの森(デエサ)の放牧に入り、60日を超える期間に46kg以上増体し、この仕上げの放牧期間には追加の配合飼料を与えず、14か月齢以上で処理された豚と定めています。「セボ・デ・カンポ」は穀物と豆類が主体の配合飼料で育てる区分ですが、屋外で飼育し、野外の自然資源を使う場合もあります。日本では粉にして配合飼料に混ぜます。熊本県の阿蘇どんぐりポークはどんぐり粉を取り入れた自家配合飼料を阿蘇の天然水とともに与え、宮崎県のどんぐりの恵みはどんぐり粉にコプラフレークや麦類10%以上を配合。
ホエー(乳清):パルマハムの伝統と、日本の乳業地帯
チーズやヨーグルトをつくるときに出る液体がホエー(乳清)です。イタリアのパルマハムの生産規程は、液状の飼料に伝統としてホエーやバターミルクを加えてよいと定めています。必須ではなく、ホエーとバターミルクの合計で1頭1日15リットルまでという上限付きです。日本では、北海道のなかしべつミルキーポークは110日齢以降、ホエー粉やチーズを配合した自家配合飼料で肥育。新潟県の純白のビアンカはヤスダヨーグルトの製造で生まれるホエイを与えます。
ビール粕・ホップ・ビール酵母(10銘柄)
酒造りの副産物を豚に与える組み合わせは世界にあります。日本流なのは、ホップそのものが銘柄の名前になっていることでしょう。岩手県の遠野ホップ豚は遠野産ホップのビール醸造副産物を農場内で乾燥・加工し、仕上げ期の豚に与える銘柄。長野県の安曇野放牧豚はクラフトビールのモルト絞りかすと四季の地場産食材を与えます。
パン・めん・菓子:食品循環に認証制度がある日本(42銘柄)
パンの耳やうどん、菓子の残りを飼料にする「エコフィード」は42銘柄が挙げていました。EUの規則(EC)No 1069/2009は、厨房や飲食店から出る調理くず(catering waste)を家畜に与えることを禁じる一方、食品製造や流通から出るパンなどの元食品は、条件を満たせば飼料にできます(欧州委員会のガイドライン)。日本では国が食品残さの飼料化を推進し、一般社団法人日本科学飼料協会による飼料の認証制度が2009年に始まりました。認証飼料は令和8年6月末で29銘柄(豚肉の銘柄数ではありません)、製造量は令和7年度(概算)で約103万TDNトン。農林水産省は、北海道は馬鈴薯の加工残さ、都市近郊は余剰食品、九州は焼酎粕と、地域の特色を記しています。滋賀県の藏尾ポーク(バームクーヘン豚)は和菓子屋「たねや」のバームクーヘン端材を配合。奈良県の郷Porkは配合飼料を使わず、回収した野菜・果物・麺類を自社で飼料にします。
一点ものギャラリー:アボカドから、バームクーヘンまで
1〜数銘柄だけが挙げていた餌です。
| 餌 | 銘柄(県) | 記事の記載の要点 |
|---|---|---|
| アボカドオイル | アボカドサンライズポーク(千葉) | メキシコ産アボカドオイルを加えた特殊飼料。放牧スタイル |
| かぼちゃ・長芋 | どろぶた(北海道) | 木の実や草の根に加え、十勝産のカボチャや長芋 |
| 竹パウダー | ばんぶぅ(茨城) | 竹パウダーを配合した飼料 |
| そば | ハヤシファーム豚 幻豚・信州雪豚・千代福豚(長野) | 蕎麦・米こうじ・アーモンド等/季節に応じて大豆・そば・ヨーグルト |
| オリーブ | オリーブ豚・オリーブ夢豚(香川)・房総オリヴィアポーク(千葉)・霧島オリーブ赤豚(宮崎・鹿児島) | オリーブ搾り果実の乾燥粉末を0.5%以上、出荷前30日間以上(オリーブ夢豚) |
| 落花生 | 萩むつみ豚(山口) | パン・米ぬか・ピーナッツ・餃子の皮などを乾燥粉砕したエコフィードが飼料の約6割 |
| サトウキビ糖蜜・化石サンゴ | やんばる島豚あぐ〜(沖縄) | 糖蜜・泡盛もろみ粕・与那国島産化石サンゴ・ヨモギ・海藻など |
| にんにく | 奥入瀬ガーリックポーク・十和田ガーリックポーク(青森)・知床ポーク(北海道) | 青森県産にんにく粉末を指定配合飼料に/仕上げ期後期にニンニク粉末 |
| バナナ | バナナポーク(千葉)・えびすもち豚・琥珀(兵庫) | フィリピン産乾燥バナナを出荷前2か月間(バナナポーク) |
| パイナップル | 南ぬ豚・パイナップルポーク(沖縄) | 石垣島産パイナップルの搾り粕を発酵/乾燥パイナップル入り飼料 |
| りんご | つがる豚(青森) | 津軽産飼料用米と津軽産りんごの搾りかすを液状給餌 |
| えごま・亜麻仁 | エゴマ豚(福島)・荏胡麻豚(宮城)・遠野亜麻豚(岩手) | 出荷1か月前からエゴマの実を3%/色麻町産の荏胡麻/亜麻仁油とエゴマ油粕 |
| ステビア | 上州ステビア育ち(群馬) | エキスパンダー加工した植物性配合飼料にステビアを配合 |
津軽のりんごのように地域の副産物を使う銘柄もあれば、メキシコ産のアボカドオイルのように輸入原料を取り入れる銘柄もあります。
なぜ日本の豚の餌はこうなったのか?
背景は三つに整理できます。第一に、飼料の輸入依存です。飼料自給率24%、濃厚飼料11%の裏返しとして、国産の副産物や規格外品を飼料に回す動機が生まれます。飼料用米も交付金で後押しされ、401銘柄のうち101銘柄(25%)が米を挙げています。ただし令和8年産の作付けは、公表された届出面積では前年比48.7%減で、一般品種への支援は段階的に縮小中です。第二に、食品産業との近さ。地域の産業がそのまま豚の餌になっています。第三に、銘柄の多さです。当サイトの収録だけで419銘柄があり、TEA豚、ゆずポーク、納豆喰豚、どんぐりの恵み——餌がそのまま名前になった銘柄があります。こうした餌を看板にした商業銘柄は、今回調べた英語圏の資料(確認日2026年10月27日)では確認できませんでした。餌を名前と物語にする。それが「日本らしさ」です。
地域で違う? 東北は米、九州はさつまいも、近畿はパン
地域別に見ると、餌にも土地が映ります。東北は53銘柄のうち21銘柄(39%)が米を挙げ、全国の25%を上回ります。九州は84銘柄のうち13銘柄(15%)がさつまいも(鹿児島7・宮崎6)。近畿は15銘柄のうち12銘柄(80%)がパン・めん・菓子くずです。銘柄数が少ない地域の割合は数銘柄で動くので、傾向として読んでください。
| 地域(銘柄数) | 目立つ餌 | 銘柄数(割合) |
|---|---|---|
| 北海道(27) | 麦 | 15(55%) |
| 東北(53) | 米 | 21(39%) |
| 関東(106) | 麦 | 48(45%) |
| 近畿(15) | パン・めん・菓子くず | 12(80%) |
| 九州(84) | さつまいも | 13(15%) |
| 沖縄(10) | 酒粕・ビール粕など醸造副産物/海藻・魚粉など海のもの/乳酸菌・酵母など微生物 | 5(50%)/各4(40%) |
売り場でどう読む? 餌の表示と食べ方
売り場やメニューには「麦仕上げ」「いも豚」「ホエー豚」のように、餌が看板になった表示が並びます。生産者の説明は「脂の甘み」「臭みの少なさ」に集まっていましたが、それは生産者の狙いで、品種や飼育期間など餌以外の条件も重なるため、餌が味を決めると当サイトは断定しません。おすすめは、餌の違う2銘柄を同じ部位・同じ調理法で並べる食べ比べ。生産者の狙いどおりかを自分の舌で確かめてみてください。
この記事の方法と限界
集計の対象は日本ブランド豚事典の日本語記事419本(2026年10月27日時点)。「飼料の特徴」欄に記載がある401銘柄を分母に、記載の語を分類して数えました(記載なし・非公開は18銘柄)。見出しの銘柄数は餌ごとの抽出、下の表は分類の集計なので少し差があります(パン・めん・菓子くずは42と44など)。九州の「さつまいも」は、さつまいもを挙げる31銘柄のうち九州7県の銘柄を数え、芋焼酎の粕や種類の分からない「いも類」は含めていません。
| 分類(全国・複数該当あり) | 銘柄数 | 割合(401銘柄中) |
|---|---|---|
| 指定配合飼料・専用設計飼料(詳細非公表を含む) | 283 | 約7割 |
| 麦(大麦・小麦・麦類) | 160 | 39% |
| 米(飼料用米・玄米・米ぬか) | 101 | 25% |
| とうもろこし | 88 | 21% |
| パン・めん・菓子くず(食品循環) | 44 | 10% |
| 乳酸菌・酵母・納豆菌など微生物 | 43 | 10% |
| さつまいも・いも類 | 37 | 9% |
| 海藻・魚粉など海のもの | 32 | 7% |
| 酒粕・ビール粕・果実など醸造副産物・果実 | 31 | 7% |
| ハーブ・薬草・香草 | 26 | 6% |
| 木酢液・竹酢液・炭 | 19 | 4% |
| 乳製品・ホエー・ヨーグルト | 10 | 2% |
| 茶・緑茶・茶葉 | 7 | 1% |
| どんぐり・木の実 | 6 | 1% |
限界は三つ。第一に、数えたのは生産者の公表表現で、配合比率や給与量ではありません。「指定配合飼料・専用設計飼料」283銘柄には中身を公表していない銘柄が含まれます。第二に、語の抽出なので取り違えが起こります。最初の集計では茶を敷材に使う銘柄が「茶」に、「炭酸カルシウム」が「炭」に入っていたため、辞書を直して数え直しましたが、見落としは残り得ます。第三に、海外との対比は一次資料に限りましたが、各国の平均ではありません。「世界にない」と断定できる餌はなく、言えるのは「英語圏の資料で、その餌を看板にした商業銘柄が見つからない」までです。
日本の豚の餌 よくある質問
Q. 日本の豚も、とうもろこしを食べているのですか?
多くの銘柄では食べています。農林水産省の資料では、日本の配合飼料の原料の約5割がとうもろこしで、令和7年度に輸入したとうもろこしの99%は米国産です。ただし配合は銘柄ごとに異なり、肥育期にとうもろこしを使わない銘柄や、配合飼料を使わない銘柄もあります。焼酎粕や茶葉などの珍しい餌は、土台の配合飼料に足されるものです。
Q. 「世界でも珍しい餌」は本当にあるのですか?
海外で焼酎粕・梅・納豆・きなこをそのままの形で与える例は、今回調べた英語圏の公的資料や論文(確認日2026年10月27日)では見つかりませんでした。ただし、酒の粕や緑茶の副産物を豚に与える研究は中国や韓国、ベトナムにあり、納豆菌と同じ種の枯草菌は2012年にEUが特定の菌株を飼料添加物として認可した例があります。「餌を銘柄の名前と物語にする文化」が日本らしさだと、この記事では考えています。
Q. 餌が違うと、味も違いますか?
生産者の多くは「脂の甘み」「臭みの少なさ」を狙いとして説明していますが、品種や飼育期間など餌以外の条件も重なるため、当サイトは餌だけで味が決まるとは断定していません。同じ部位を同じ調理法で2銘柄食べ比べて、自分の舌で確かめるのがおすすめです。
まとめ
日本の豚の餌の土台は、穀物と大豆粕などを組み合わせる配合飼料で、配合は銘柄ごとに違います。目立つのは、その上に乗る副菜でした。401銘柄のうち68銘柄が焼酎粕・茶葉・梅・海藻・納豆・きなこなどを挙げ、さつまいもを加えると93銘柄。日本はその副菜を銘柄の名前と物語にしてきました。次に「いも豚」や「ホエー豚」の表示を見かけたら、その豚が食べてきた土地を思い浮かべてみてください。
出典・関連URL
銘柄ごとの飼料の記載は、本文でリンクした各銘柄の記事(日本ブランド豚事典)の「飼料の特徴」欄によります。海外との対比と制度の数字は、次の一次資料を参照しました(確認日はいずれも2026年10月27日)。
- Kansas Agricultural Experiment Station Research Reports(Swine Day 2023)「Effects of Increasing Energy or Lysine in Soybean Meal-Based Diets on Early and Late Finishing Pig Performance」
- University of Illinois(H. H. Stein)「Alternative Grain Sources in Diets Fed to Pigs」
- Journal of Animal Science and Biotechnology(2013・Aarhus University ほか)「Models to quantify excretion of dry matter, nitrogen, phosphorus and carbon in growing pigs fed regional diets」(Europe PMC)
- BOE(スペイン官報)Real Decreto 4/2014(イベリコの肉・生ハムなどの品質規格)
- Consorzio del Prosciutto di Parma「Disciplinare Prosciutto di Parma」(2025年5月17日版・伊語)
- Consorzio del Prosciutto di Parma「Product Specifications for the Prosciutto di Parma」(2025年5月17日版・英語)
- Teagasc(アイルランド農業食品開発庁)「Seaweed by-products – Sustainable feed ingredients for pigs?」
- 東京大学大学院農学生命科学研究科(English)焼酎粕を与えた豚の研究(2020年3月)
- Animal Production Science(2012・韓国)緑茶副産物を肥育豚に与えた研究(DOI)
- Frontiers in Microbiology(2022・中国)発酵黄酒粕を肥育豚に与えた研究
- EU 実施規則 No 91/2012(枯草菌 Bacillus subtilis の特定菌株の飼料添加物認可・英国保存版)
- EU 規則(EC)No 1069/2009 第11条(給餌の制限・英国保存版)
- 欧州委員会 元食品(former foodstuffs)の飼料利用に関するガイドライン(PDF)
- 農林水産省「エコフィードについて」
- 農林水産省「エコフィードをめぐる情勢(令和8年10月)」
- 農林水産省「飼料をめぐる情勢(データ版)(令和8年10月)」
- 農林水産省「濃厚飼料をめぐる情勢(令和8年10月)」
- 農林水産省「令和8年産 水田活用の直接支払交付金予算に係るQ&A」
- 農林水産省 広報誌 aff 2020年8月号「黒豚」(鹿児島県黒豚生産者協議会への取材)
- 農研テクノ株式会社「地養素」
- 農研テクノ株式会社「企業情報(沿革)」
最終更新日
2026年10月29日
